エンディングノート(終活ノート)とは、自分の終末期や死後に備えてあなたの希望や情報を書き留めるノートです。
遺言書と違い、法的拘束力はありません。
そのため、書き方に決まりはなく自由に書けるのがメリットです。
あなたの希望をせっかく書いても、情報が足りないと逆に家族を困らせてしまう可能性があます。
この記事では基本的なエンディングノートの項目を解説します。
この記事を参考にエンディングノートの導入を検討してみてください。
エンディングノートの目的
エンディングノートを書く目的はなんでしょうか。
家族や大切な人に自分の希望や情報を残すことが目的です。
その効果として次のことが挙げられます。
- 自分が希望する最期を迎えられる
- 家族の負担を減らすことができる
ここからは詳しく解説します。
自分が希望する最期を迎えられる
病気など自分で判断することができない状態になったとき、エンディングノートに医療や介護の希望を書いておくと家族は迷うことがありません。
延命治療は希望しないけど、家族に見送られたいなど、希望通りにしてくれる可能性があります。
家族がもめた場合は、決定してほし人を指定しておくこともできます。
家族の負担を減らすことができる
終末期の治療や介護のことだけでなく、葬儀のことやさまざまな手続きのこと、人生のエンディングを迎えるにあたり決めないといけないことが多く発生します。
終活が注目されてからは様々なサービスが増え、墓地だけでなく葬儀についても生前契約が可能なプランが販売されています。
あなたが自分の最期をあらかじめ決めておくだけで、
あなたとの最期の時間をゆっくりと過ごせるようになるでしょう。
あなたの死後も資産の分割や不動産の名義変更、保険金の請求など、あなたの家族には事務的な負担が発生します。
どこにどんな資産があるかを把握するだけでも一苦労です。
資産状況や契約情報を書き留めておくだけでも残された家族はとても助かるのです。
エンディングノートの書き方
エンディングノートの目的や効果がわかったところで、さっそくエンディングノートを書いてみましょう。
エンディングノートの構成は次の通りです。
- 自分に関すること
- 親戚や友人のこと
- 資産に関すること
- 医療や介護のこと
- 葬儀のこと
- お墓について
- その他 大切な人へのメッセージなど
この構成以外にも過去・現在・未来の軸で考えると網羅的になります。
自分に関すること
自分に関することは基本的な情報や重要書類の保管場所などです。
今は携帯などで連絡を取り合うことが多いため、家族であってもフルネームや住所があいまいな場合も多いです。
持病やアレルギーなども離れて暮らす家族は知らないこともあります。突然の入院などにも備えて自分に関することも書き留めておくと安心です。
- 本籍地
- 生年月日
- 持病や病歴、アレルギーのこと
- 家族の名前や連絡先、家系図
- 重要書類の保管場所
- 子供の頃のニックネームや思い出、エピソードなど
親戚や友人のこと
万一のときに知らせてほしい人や会いたい人の氏名や連絡先を書き留めておくと便利です。
年賀状の習慣が薄れてきている現代では氏名や連絡先がわからないことも多くあります。
親戚はどこかでつながっている場合がほとんどですが、友人の連絡先まではわかないことも多いはず。
相手との関係性やニックネームなどを書いておくと家族も相手を思い浮かべやすいかもしれません。
葬儀に参列してほしいのか、訃報を知らせるだけでいいのか、家族が迷わないように友人関係の希望はできるだけ細かく書くようにしましょう。
- 親戚や知人の氏名や連絡先
- 自分との関係
- 知らせてほしい内容、知らせる方法
資産に関すること
資産に関することは情報として包み隠さずにすべてを書き出しておきましょう。
貯金通帳や保険証券が見当たらないという理由で取引銀行や生命保険の加入状況がわからないということが多々あります。
若い世代の方も、ここだけはなにかにメモするなどしておきましょう。
- 遺言書の有無や保管場所
- 預貯金
- 年金
- 保険
- 自動車
- 不動産
- 有価証券
- 貴金属・宝石(保管場所も)
- その他 資産価値のあるもの
- 貸しているお金
- 借りているお金
- 保証人になっている場合はその人の氏名・連絡先
- クレジットカードや電子マネーなど
- デジタル系のアカウントや契約情報
- その他 各種支払先など
- 家財道具の処分や形見分けについて
医療や介護のこと
医療と介護の希望はできるだけ書いておくようにします。あなた自ら意思表示ができない場合もあるからです。
あなたが決められない状況では、その決断の責任が家族の心の大きな負担になります。
認知機能の低下であなたとの意思疎通が難しくなることも考えられます。元気なうちにあなたの考えを書いておくようにしましょう。
- 延命治療は必要か
- どんな最期を迎えたいか(家族に囲まれて、自宅で、など)
- 介護は誰にしてもらうか(場所は施設か自宅か。ヘルパーさんに来てもらうか、家族の場合は誰に頼みたいか)
葬儀のこと
葬儀は亡くなった人と、その親しい者で行うお別れの儀式です。
葬儀や供養の方法などはあらかじめ自分で決めておけば家族も迷うことがなく助かります。
すでに墓地や葬儀を生前に契約していた場合はその情報も記入します。
すでに契約を済ませている場合は、あらかじめ家族にも伝えておくようにします。そんなこと知らずに自分たちで手配をしてしまった、なんてことにならないように注意が必要です。
業者などは知らせなくても、エンディングノートに詳しく書いてあるからと言っておくだけで大丈夫です。
- お寺の名称や連絡先
- 葬儀業者の連絡先
- 宗教、宗派(仏教、神道、キリスト教等)
- 葬儀の形式や予算(一般葬、家族葬、密葬、火葬のみ希望など)
- 供養の方法(永代供養など)
お墓について
先祖代々のお墓がある場合は別として、埋葬方法や墓地に希望があれば記入します。
事前に準備している場合は所在地や管理者の連絡先なども。
- 埋葬方法(散骨など)
- 墓地(海が見える場所がいい、共同墓地でお墓を持たない選択も)
その他 大切な人へのメッセージなど
エンディングノートの特徴は、自分の希望や情報だけでなく、あなたの思いを残せるということ。
縁起が悪いという理由で、家族へのメッセージまでは書かない人も多いかもしれませんが、節目の年に家族への感謝の気持ちだけでも書いてみるといいかもしれません。
記入例1 子供へ
生まれてきてくれてうれしかった。苦労したけど、成人式の振袖姿に感動した。
記入例2 夫へ
つらいときに一緒にいてくれて心強かった。沖縄旅行の思い出が忘れられない。
以上のように自分が最期のときに伝えたい言葉というよりは、今の自分が伝えたい気持ちや感謝を記入するといいかもしれません。
- 楽しかったエピソードを書いてみる
- 感謝の気持ちを書いてみる
- 特別な思いがあれば書いておく
エンディングノートを書くタイミング
エンディングノートはいつかけばいいのでしょうか。
エンディングノートを初めて書くあなたは、思い立ったらすぐに書いてください。
全部いっぺんに書くのは大変なので少しずつ完成させるようにしてください。
準備するにはまだ早いと思う項目や迷うものはとりあえず飛ばしても構いません。
エンディングノートの注意点
書いたら定期的に更新すること
エンディングノートは書いて終わりではありません。
交友関係の変化や、自分の最期に対する気持ちも変わるかもしれません。
誕生日を迎えたら更新する、節目の5年おきに更新するなど時期を自分なりに決めておきましょう。
金融資産については新たに口座を開設したり不動産や株式を取得するなどの変化があった都度更新することがおすすめです。
万が一の際に抜け漏れがあるとせっかくの情報も活用できません。
紛失や盗難で悪用されないように注意
金融資産やクレジットカードの情報も記入すると家族も助かります。
万一エンディングノートを紛失や盗難に遭った場合のことも考え暗証番号などの重要な情報は記入しないようにします。
どうしても必要な場合は、家族が見てわかる暗号にする、暗証番号などが書いてあるものは別に保管するなどの方法を検討します。
法的拘束力はないので資産の分割でもめないように遺言書が必要な場合も
エンディングノートは自分の希望を家族に伝えるのに便利なツールです。
ただ、遺産の分割に関する法的効力はありません。
介護してくれた娘に多く遺産を残したいというような希望を書いておくことはできますが、
相続人全員が同意しないとあなたの希望通りにはなりません。
あなたが死んだ場合に唯一できる意思表示は遺言です。
特に遺産の相続についての希望があるならば遺言書の作成が必要です。他には、生命保険を活用した遺産の残し方もあります。
エンディングノートの書き方のまとめ
エンディングノートはあなたと家族をつなぐノートです。エンディングノートを書いておくだけであなたの家族への思いが伝わり、大切な家族の心の負担も軽減できます。
エンディングノートの書き方に決まりはありませんが、書く目的は大切な人たちに必要な情報を残すことです。
あなたの大切な人を考えれば、書くべきことはわかるはずです。
必要な情報の抜け漏れを防ぐなら、まずは市販のエンディングノートを手に入れてみましょう。
エンディングノートには資産、貴重品の場所、知人の連絡先、葬儀のことを中心に書きます。
あとは時間がある時、気が向いた時に埋めていけば大丈夫。
一度に完成させる必要はありませんが、万一のことがいつあるかは誰にもわかりません。
重要なことから書いていき、気長に無理せず完成を目指しましょう。
あなたとあなたの大切な人のために、エンディングノートの導入をぜひ検討してみてください。